丹野 久
(北海道農産協會,日本 北海道札幌,060-0004)
キーワード:良食味;寒地;アミロース含有率;育種
北海道は日本で新潟県と1,2位を爭う米の収穫量を誇っている。しかし,日本で最北に位置するため気象條件が厳しく,稲作の歴史も東北以南に比べ短いため,「コシヒカリ」のような全國銘柄の良食味品種は生まれてこなかった。むしろ東京,神奈川,愛知などの大消費地で食味の評価が低く,1975—1980年頃には當時の米余りと相まって,北海道米の消費が減退する問題が生じた。
一方,良食味米を生産するためには,前報[1-2]で取り上げた良食味米生産技術および作付けされる良食味品種が必要である。そこで,北海道の水稲育種では,北海道立(現,北海道立総合研究機構 農業研究本部)の水稲育種擔當の中央 ? 上川 ? 道南 ? 北見農業試験場(以下,農業試験場は農試と記す)において,1980年から始まった「優良米の早期開発試験」以來の 4期28年間のプロジェクト(以下,優良米早期開発プロジェクトと記す)などにより,うるち良食味21品種を育成した(表1,図1)。

表1 1980年以降育成のうるち良食味21品種の中で主要および特徴的な9品種における育種年限短縮法への供試の有無および食味などの諸特性[3]
その結果,北海道米の食味水準の向上が達成され,東北以南の銘柄米品種と遜色が無くなった[4-5]。同プロジェクトでは実施時期により多少の違いがあるが,①育種年限の短縮,②育種規模の拡大,③食味関連分析値による食味選抜が主要な柱であった[6-7](図2)。本報では,同プロジェクトを中心にこれまでの北海道米の食味向上に関する育種の概要を説明する。

図1 北海道における1980年以降のうるち品種別作付け比率の推移[3]

図2 1980年から開始した北海道立農業試験場(現、北海道立総合研究機構 農業研究本部)における良食味米品種開発プロジェクトの試験構成の例[6-7]
品種の成立要件の一つとして,特性が実用上固定していることがある。交配によって得た雑種集団は,初期には特性の分離が大きい未固定個體が多く,世代が進むにつれ主要な特性が固定した個體の頻度が高まる。そのため,1年1作栽培では交配から品種育成まで 10年は必要であった。そこで時代の要請に早期に応えるべく育種年限を短縮するため,世代促進栽培と葯培養法を取り入れた。……